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脇に倒れているオードリーを抱き起した。すでに絶命している。多分身を張ってノクスを守ろうとしたのだ。そのそばにカロレッタも倒れていた。まだ意識があった。
「ノクス……ノ…」
「ノクスは無事だ、カロレッタ」
「…ル…クスさま…?」
「そうだ、ルクスだ。ノクスを助けに来た」
「あなたは……ノクスをご……存知だった、のですか……?」
「夜はずっとノクスと過ごしていた。外にも何度も連れて行った。僕がノクスを守って逃げる。カロレッタも…」
「わた…しはもうだめ……聞いて、ルクスさ…ま、ノクスはあなた様のあ…に」
咳に襲われてカロレッタは血を吐いた。
「もう喋るな!」
「いえ! これは……ノクスは、あなたの、兄上です……あなたたち……は双子のご兄弟……体が弱く目の見え…ないノクスを母上様はここに……」
愕然とした。
「ノクスは……僕の兄? 僕の……なぜ! なぜこんなところにノクスを!」
「しかた……なかった、ノクスが世継ぎになる……わけにはいかなか……父上もご存じない…ゆるして……」
息の途絶えたカロレッタを抱いたまま、ルクスは呆然とした。
「ルクス? カロレッタは? ルクス?」
顔を向けた、自分そっくりのノクスに。いや、兄に。その怯えた顔を見てルクスの心が決まった。
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