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食事は一日に2回。入浴は2日に1回。カロレッタは毎日ブラッシングは欠かさない。
ノクスはこのブラッシングをしてもらうのが大好きだ。なぜ必要なのかは分からない。けれど自分の髪がふわっとするのは気持ちがいい。
病気になった時はそのままに。そう言われたけれど、高熱が出た時などはカロレッタは一生懸命にノクスに尽くした。自分には子がいない。今やノクスが我が子も同然。慈しむ心が出ていた。
言葉を教え、少しずつ勉強を教えた。外の世界は教えず、それでも本は読んでやった。出てくるものはあくまでも単なる物語の一部として。
ノクスは質問をたくさんしたけれど、物語に設定された言葉としてしか教えなかった。現実を知ることは身の危険を伴う。決してそれを教えないことが、カロレッタとオードリーの決め事だった。
カロレッタは自分が来た時だけは明かりを強くした。もちろんノクスには分からない。けれどその明かりの中で見るノクスは儚く、美しかった。
時に花を持って降りてくる。見えないけれどノクスはその香りを楽しんだ。
「それは、なに?」
「花という名前の……香水よ。時々いろんな香りを持ってくるわ」
どうせ分からないのだ、せめて花だけでも身近に置いてやりたかった。
手の届かない時計のそばに小さな棚を作って、そこに花瓶を置いた。
時間ばかり有り余るノクスは、それだけでも充分楽しんだ。
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