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「光だ」
ぽつりと呟いて私は、急いでそちらへカメラを向ける。
でも、見間違いだったのか。
映る景色は、白い欠片が舞うばかり。
「さぶっ!」
視界と身体をとりまく白さは、冷たさとともに、日毎に濃くなっていく。
――雪女でも凍える、この寒さ。
この星は、未曽有の冷気に覆われ、全てが白に染まっている。
(まったく、どこまで冷えるのか)
ひやりとしたカメラを持て余していると、かすかに振動して、声が響く。
『雪女なのにそんなに厚着して、熱くねぇのか』
どこに眼がついてるんだろう、と想うけれど、質問する彼に答える。
「妖力で防御力をあげたのが、結果、そう見えてるだけよ」
昔は着物姿で人肌を求めたものだけれど、こんな冷酷な寒冷環境じゃあ、足りなさすぎる。
雪女でも、その白さに奪われるほどの冷たさなら、自衛せざるをえない。
動きやすさに重ね着のしやすさ。
洋装って便利だ。
最近は眼鏡を追加したけれど、これはあれだ、目元の硬化を防ぐため。
「でも、しばらく見てないね。私たち以外」
『前にあった奴らも、どうしているやらなぁ』
ふるえる両目を閉じて、想いだす。
「サラマンダーちゃんに、フランケンちゃん。それに、氷像さんにホムンクルスさん。みんな、この白さに抗うように、笑っていたね」
『あぁ。俺のデータのなかにも、ちゃんと残ってるぜ』
そうか! と感心して、私はカメラのスイッチを切り返る。
「……まだこの頃は、景色が見えてたなぁ」
白い中にもかすかに見える、紅い色や緑の色。
凍る湖にも、まだ青い色が映っていた。
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