白だけじゃないゆえに

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「神様でもないのに氷上渡り、やってよかったのかな」 「逆にいなくなったから、こんな景色になってるんじゃないかね」  なるほど、と頷いて、はぁと息を吐く。  ――そんな神様を崇め、私たち怪異を恐れ、そして愛してくれた人間達はもういない。  かじかむ指に力を込めて、カシャ、と小さくシャッター音を鳴らす。 『身体がカテェわ』 「適度な運度が必要ね」  風と白い欠片が舞う音に、かすかな会話は打ち消される。 『響くねぇ、部品に響く。付喪神でなければ、もう冷たくてバラバラよ』 「雪女でも、そうだからねぇ」  腰に来るのは、私も運動不足か、熱量不足か。  雪女だからって、こんな異常な冷たさに、抗えるわけじゃない。  だから、凍える星に寄り添って、白くなってしまった仲間もいたけれど。  ――諦めを口にしながら、なのに、悲しそうな顔をしていたのが忘れられない。  だから私は、今も、心焦がす熱を求めている。 「そろそろ行こうか」 『どっちへ行く?』 「南方かな。暑い方なら、もしかして、白くなってないかもしれないじゃない」  ははは、と笑いながら、君は何も言わない。  ……まったく。  "じーぴーえす"とか付いてる君は、ここがどこだか、わかってるくせに。 「不思議だね。こんな世界にならなければ、君と旅をするなんて想わなかった」  偶然出会った、付喪神の君。  カメラの君はシャッターを閉じて、白い中、今にも命を閉ざそうとしていた。 『まったくだなぁ。あのまま眠ると、想っていたんだが』 「誘ったの、いやだった?」 『……いやぁ。興味を惹かれたんだ』  ん? と想う私に、君が続ける。
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