0人が本棚に入れています
本棚に追加
「神様でもないのに氷上渡り、やってよかったのかな」
「逆にいなくなったから、こんな景色になってるんじゃないかね」
なるほど、と頷いて、はぁと息を吐く。
――そんな神様を崇め、私たち怪異を恐れ、そして愛してくれた人間達はもういない。
かじかむ指に力を込めて、カシャ、と小さくシャッター音を鳴らす。
『身体がカテェわ』
「適度な運度が必要ね」
風と白い欠片が舞う音に、かすかな会話は打ち消される。
『響くねぇ、部品に響く。付喪神でなければ、もう冷たくてバラバラよ』
「雪女でも、そうだからねぇ」
腰に来るのは、私も運動不足か、熱量不足か。
雪女だからって、こんな異常な冷たさに、抗えるわけじゃない。
だから、凍える星に寄り添って、白くなってしまった仲間もいたけれど。
――諦めを口にしながら、なのに、悲しそうな顔をしていたのが忘れられない。
だから私は、今も、心焦がす熱を求めている。
「そろそろ行こうか」
『どっちへ行く?』
「南方かな。暑い方なら、もしかして、白くなってないかもしれないじゃない」
ははは、と笑いながら、君は何も言わない。
……まったく。
"じーぴーえす"とか付いてる君は、ここがどこだか、わかってるくせに。
「不思議だね。こんな世界にならなければ、君と旅をするなんて想わなかった」
偶然出会った、付喪神の君。
カメラの君はシャッターを閉じて、白い中、今にも命を閉ざそうとしていた。
『まったくだなぁ。あのまま眠ると、想っていたんだが』
「誘ったの、いやだった?」
『……いやぁ。興味を惹かれたんだ』
ん? と想う私に、君が続ける。
最初のコメントを投稿しよう!