0人が本棚に入れています
本棚に追加
後編
桜が散って、太陽の日差しが強くなり、遠くに見える山が赤く色づいて、地上が白一色に染まる。
また桜が咲き始めて、とうとう君が一年以上来なかったなぁなんて思っていたら、僕のもとに君以外の人がやって来た。
君の娘かな。久しぶりに会ったよ。涙を流しながら、小さな壺を抱えている。
近くで赤ちゃんの鳴き声がした。沢山の人間に埋もれていて僕の位置からじゃ見えないけれど、きっとその赤ちゃんが君の孫なんだろうね。
沢山の人間の中で、唯一色を纏う人間が小難しいことを述べ始めた。君が選んだんじゃない百合が飾られ、昼間なのに蝋燭の火を灯す。君が性懲りもなく焚いていた香の匂いが鼻につく。
鼻をすする音と、嗚咽がそこかしこで聞こえてきて僕はうんざりした。ほら言ったじゃないか。君がマサキのところに行くと、悲しんだり困ったりする人がいるってさ。
今さら、そんな事言ったって、君にはもう届いていないんだろうけど。
最初のコメントを投稿しよう!