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第1章 ドラゴンの街
何千年も昔、ドラゴンが住んでいたことで有名なこの街は、
「ドラゴンの街」と呼ばれている。
この街に多く住んでいる、ドラゴン研究者の間では、別名「考古学者の街」とも呼ばれている。
もちろん僕の父親も考古学者だ。
昔、父がよく連れて行ってくれた発掘現場には、ドラゴンが住んでいたとされる足跡や翼などの化石がたくさん発見されていた。
しかし、何年か前まで、生息していたドラゴンたちも、環境の変化についてゆけず、生息数は少なくなり、今では、絶滅してしまったらしい。
それが、父たちの研究結果だった。
でも時々、思い出したかのように、「ドラゴンの子供を見た。」という情報がもたらされることがある。
だから、人々はどこかでドラゴンが生き延びて、いつか復活するのではないかと信じている。
僕もその一人だ。
なぜそんなことを言うかというと、
これは、誰にも言っていない、父にも言っていないことだ。
雪の降ったある日、幼かった僕は、父に連れていかれた発掘現場で雪の中から生まれるドラゴンの子供を見かけたのだ。幼かった僕は、驚いてその場をすぐ離れてしまったが、硬いうろこ状の皮膚に包まれたその姿は紛れもなくドラゴンの子供だった。
その時、ドラゴンのそばに、僕と同じぐらいの女の子を見かけた。
「あれは、誰だったのだろう?」
静かにというサインを出している彼女もまた、驚いた顔をしてドラゴンを見つめていた。
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