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遠くからざわめきが聞こえる。違う、海の波の音だ。磯の香り。ぐるぐると杖に巻きついてくるのは、波のような細い水のとぐろ。
「待って」
今度はエデの頭を軽くはたいた。
「この前、廊下を浸水させて寮長に怒られたばっかりでしょ。こんな狭いところで使っちゃったら、みんな窒息して死んじゃうよ!」
エデは口尖らせて、頭をさする。じゃあ、とエデはにっこりと笑って杖を構えた。
『属性のえり好みをする余裕があるとはな!! まずはお前から喰ってやる!』
悪魔の太い腕が、こちらに覆いかぶさってきた。
エデの体が黒いオーラに包まれた。闇の悪魔とは違う、紫じみた黒いオーラだ。エデの宝石は、黒紫色に発光し始めた。
『愚かな!闇の悪魔に、闇魔法で対抗するとはな!!』
私の心の中を、悪魔が代弁してくれた。私はまたエデを止めようとしたが、今度は振り払われてしまった。
どす黒い光が、エデの杖の先端に集中する。杖の端から端までが真っ黒に染まって、黒く発光する。
一瞬の真空の沈黙のあと、エデの杖の先から光が放出した。間違いない、上位闇魔法だ。闇の悪役魔法使いが必殺技でよく使うやつ。エデはどうして、そんな魔法が使えるんだ。
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