本が床から生えてくる

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本が床から生えてくる

 彼女の名はエデ。聖クーニグンテ魔法学園の新入生。学園図書館の中でも、彼女の姿は目立つ。小柄な彼女が本を取ろうと背伸びをすると、我こそは、と男子学生たちが寄ってくる。小さなエデは、誰かに話しかけられるたびに、困ったように首をかしげたり、微笑んで手を振ったりして、その申し出を断ろうとする。それでも、男子学生たちはエデを手伝おうとする。 そんな彼らを追い払ったり視線で射殺したりするのが私の役目だ。私が本棚の影から出てきて、エデがうれしそうに私に駆け寄ると、大抵の男子学生は残念そうにどこかへ行ってしまう。 「1点貸し出しでよろしいですね」  有翼人の司書が、カウンターの中から尋ねた。 「では、学生証をお願いします」  私は召喚学の入門書と、自分の学生証を机の上に置いた。 「はい、手続きが完了しました。貸し出し期間は2週間です。遅れることのないようにお願いします」  私は借りた本を受け取った。後ろに並んでいたエデが、前に出てくる。 「では、あなたも学生証をお願いします」  エデはにこにこと微笑みながら、自分の胸元のポケットを探って、そのまま固まった。     
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