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折しも、仕事帰りのこのタイミング。
同年代だろう宮仕えの身としては、その疲労の原因は察し易い。
だから、敢えてこの席では、彼女の仕事絡みからは話題を避けた。
それでも他愛のない会話の中で、少しだけ彼女の事が垣間見えてくる。
兄弟は弟で、一昨年に甥が生まれたこと。
七年前から、この町に住んでいること。
週末のジムが、一週間の気晴らしになっていることなど。
そして彼女は、フッと苦笑とも自嘲ともいえない歪んだ笑みに口元を
綻ばせた。
「なんていうか、この年齢って、特定の人でもいない限り誰かと休みを
過ごすっていう状況でもなくなるんですよね。
だから、必然的に一人が多くて。まぁ、それもまた気ままで良いんですけど」
ちょっとした時に、独りの寂しさは否めない。
だが、余程に気を抜いていられる相手でないなら、休みの日くらいは
一人のほうが気遣いの要らない分、気楽だ。
若くもない大人ならではのこんな矛盾した感情は、大祐も大きく頷ける。
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