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「分かりますよ。だからみんなある程度のところで結婚するんでしょうけど、僕の周りの既婚者は、全員とは言わないですけど、そんな結婚にも後悔してるのが現実みたいでしてね。
現に飲み会だと、会の半分はパートナーの愚痴か悪口大会になってますから」
ああ、確かに。
沢田のきれいな口元が、苦笑に歪んだ。
「年齢的なものは男性と女性は違うんでしょうけど、他愛のない話題で
同じように盛り上がっていられるのって、いわゆる適齢期までですよね。
それを過ぎると、既婚と未婚じゃ話の中心がズレちゃうし。
加えてそのズレがいつしか固定されて、片や配偶者の愚痴で、片や仕事の愚痴になる」
合わさる視線の先で、細い苦笑が重なった。
だが、話題は後ろ向きでも、互いの間の空気は軽かった。
だからかは分からないが、ツルリとこんな言葉が大祐の口から滑り出た。
じゃあ、気ままな一人より話し相手が必要な時は、声掛けてください。
たぶん僕も、気ままに一人でいるでしょうから。
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