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5 偶然の落としどころ(つづき)
「いざ着いてみると、普段料理しない人間には野菜コーナーって物が溢れ
過ぎてて、目移りというか、選択肢が多すぎて軽いパニックになる訳ですよ。
で、白菜とか買ったら明日も鍋作らないと腐るんだろうなとか、きのこは
何を入れるものなんだとか色々考えちゃって……」
「じゃあ、お鍋は断念?」
大祐は、本格的に情けない顔で頷いた。
「その代わりに、こうセットになってアルミの簡易鍋みたいなのに入ってる
鍋焼きうどんを見付けて、それを買って食べました」
あらぁ。
残念そうな声音で呟き、目の前で彼女の眉尻が小さく下がる。
だが、ここで「それなら今度は一緒に」とならないところは、さすがに
青さがない。
そして、さらりと話題を振ってくる。
「そういえば、週末に姪御さんとデートなんて、随分と仲良しなんですね」
「仲良しっていうか、兄が……、あっ姪は兄の娘なんですが、そもそもあそこが仲良し親子で、毎年恒例で誕生日の親子デートしてるらしいんです。
でも今年は、生憎、兄が海外に長期出張中でして。僕に、代役が回ってきたって訳です」
しかし、ペラペラそんな事を話してから、はたと我に返った。
これじゃ、自分には週末デートする人もいませんって、
晒してるようなもんだな。
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