雪の日に

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雪の日に

珍しくこの地方に雪が降り積もった。 僕と彼女は、写真を取ることをメインとしたサークルで今日という絶好のチャンスを逃すまいと近くの公園に来ていた。 そして、彼女はカメラを自身の前に構え、ジェスチャーを混ぜながら聞いてくる。 A「何処で撮ろうか?」 僕は久しぶりにはしゃぐ彼女を前に、少し戸惑う。 はしゃぐといっても行動で示しているのではなく、彼女が先頭を切って進んでいる姿を見てだ。普段は僕の後ろを付いてきて、各自自由に散策しつつ撮る。そんな感じだから。 B「奥に行ってもいいけど、ここで撮ろうか」 彼女は驚いた様で不思議そうな顔を見せる。 A「どうして?」 僕はカメラを彼女に向けシャッターを切る。 B「だって、ここがベストポジションなんだもん」 A「急に撮らないで……」 元々寒さで薄紅色になっていた顔色が、一気に色を濃くする。 彼女は被写体になることに慣れておらず、精一杯カメラで自分の顔を隠そうとする。だが、まるで隠れていない。 そんな彼女が、片目だけひょこっとカメラの横からだし、こちらを上目遣いで凝視する。 A「絶対口開いてた! 黒歴史だぁ~……」 B「そんなことないって! ほらっ」 A「ん~! 見せなくていいから」 僕がカメラを180度回転させ、先ほど撮った写真を見せつけると、彼女はまたカメラの後ろに引っ込んでしまった。 A「恥ずかしすぎて暑い。 雪解けちゃいそう」 B「解けない解けない」 完全に空回りしていると思い、僕は彼女をからかうのをやめる。 B「それじゃあ、ちゃんと写真を撮りに行きますか」 そう言うと彼女はカメラを胸の前に降ろし、横目で僕を見つめてくる。 A「次撮るときはちゃんと言ってくださいね。 じゃないと私が解けちゃいますから」 彼女はその言葉を残し背を向ける。 B「そうだね。 解かさない様に気を付けないと」 A「ふふっ」 彼女がかすかに笑う声が聞こえた。 本当、雪の日は誰しも心が躍るものなのだなっと密かに心の中で思った。
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