きみと捲れば何百回も

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「うん、そうだよ?」  優ちゃんがどこか冗談っぽく言ったことに、僕は冗談とか言うのはあんまり得意じゃないから、真面目に返す。  僕のこういう冗談で返せないところ、優ちゃんはあんまり好きじゃないかなって思うんだけど、今更変えられないからそこはごめんねだ。 「……ばーか」  あ、優ちゃん照れてるな。優ちゃんはちょっとだけムッとした顔をして僕から目を逸らした。わかりやすくて可愛いな。 「優ちゃんのくれた本も今もちゃんと読んでるよ?」  僕がまた笑って言うと、優ちゃんがきょとんとした顔をする。あれ、忘れてる? 「このシリーズの最初の本、優ちゃんがくれたんじゃない」  忘れちゃったの? と優ちゃんのことをちょっとだけからかうようにクスクス笑うと、優ちゃんがまたムッとした顔をして僕から目を逸らす。 「……私はちょっとくらい、アンタと可愛い服の話とかしたいんだけど」 「んん? んー……まあ、優ちゃんがしたいなら僕は付き合うけど」 「……いいよ、アンタはずっとUFOの本でも見てなよ」 「え、いいの?」 「……そこ喜ぶとこじゃないからね」 「優ちゃんも一緒に見ようよ、楽しいよ」  ね? と手を合わせてお願いすると、優ちゃんは小さくため息をついて、……小さく笑った。 「……しょうがないな。持ってきなよ」 「うん、待ってて!」  急いで靴を脱いで、縁側から自分の部屋にパタパタと走った。  不思議なものが好き。昔からずっと、そういうのが好きだった。だからこの家も好き。もしかしたらおばけとかが出てくれるんじゃないかって。  部屋の本棚を漁りながら、さっき言ってた優ちゃんの本も一緒に手に取る。もう何十回も何百回もページを開いてたくさんたくさん読んだけど、この本は開く度にまだ楽しい。  きっと、優ちゃんと一緒に見たらもっと楽しい。知ってるんだ。優ちゃんがいたら知ってる話だってたくさん楽しい。  そんなこと言ったら優ちゃんはまた照れるんだろうなって、こっちの本と、優ちゃんのくれた図鑑、二冊とも大事に大事に抱えて優ちゃんのところに走った。
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