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降り積もる雪
僕は何年かぶりにこの町に戻ってきた。決して都会とは言いずらいこの町に。
そして、僕はとある山道へと足を運び一人の女性に話しかける。
B「ひ、久しぶり」
彼女は立派な雪化粧に包まれたこの町をパシャリまたパシャリとシャッターを切り続けている。
B「(あれ? 聞こえなかったのかな?)」
A「いいえ、聞こえているわよ」
B「え、ああ……そうか」
心の声でも聞いていたかのように答えた彼女に、僕は一瞬驚いてしまった。
彼女はゆっくりとカメラから目を離し、顔だけこちらに向ける。
A「久しぶり。 随分と待ったわよ」
B「ごめん。 電話してもでないから」
A「そりゃそうよ。 出られないもの」
B「だよな」
カメラに夢中になった彼女は、何者も阻害することはできない。分かっていたはずなのに寂しい返答だ。
だが、彼女が随分待っていたのは明白で、雪が頭やカメラの上に積もっているのが見えた。
B「頭とカメラに雪が積もってんぞ」
A「……??」
B「なぜ不思議そうな顔をする」
A「雪は積もるものでしょ?」
そうだ。彼女はこういう奴だった。いつもどこか抜けてて、雪の様に冷たい。
僕は呆れて彼女に積もった雪を手のひらで軽く払い除ける。
A「痛いわ」
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