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B「そういう時は“ありがとう”だろ~。 まったく……」
彼女は上を見て、雪が頭の上からなくなっていることを確認する。見えるはずもないのに。
すると、かけていた眼鏡がズルっと鼻頭の方にまで滑り落ちた。
A「大変よ。 眼鏡がズレたわ」
B「みりゃ分かんよ」
彼女は目を見開き僕を凝視する。僕はその意味を分かってはいたが、敢えて聞くことにする。
B「自分で上げれば?」
A「私今、手が離せないから」
B「は?」
思ってもいない返答に僕は戸惑う。
B「て、手が離せないとは?」
A「見ればわかるでしょ。 カメラを固定しているの」
B「分かんねーよ」
僕は渋々彼女に近づき、眼鏡の柄の部分を持ち位置を合わせてあげる。
B「ここらへんか?」
A「もっと上。 あー、もう少し下よ!」
B「どっちだよ……」
数分彼女の注文と格闘し、ようやくお望みの位置に眼鏡が来たらしく良しをもらえた。
だが、こんなことをしていると昔のことを思い出す。昔は彼女に振り回されていたっけか。
過去の記憶がどんどんと蘇ってきて、僕は少し笑ってしまった。
A「何? 急に笑うとか怖いわ」
B「失礼な! 昔のことを思い出してたんだよ」
A「昔のこと?」
B「ああ、小さいときもこんな風にお前に振り回されていたなって」
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