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彼女はその言葉を聞き、寂しそうな表情になる。
A「もうあの頃には戻れないのね」
B「そうだな。 今日みたいな雪が積もった日しか戻れない」
二人は黙り込んでしまう。
そして僕がその現実に涙を流そうとした瞬間、彼女が不意に言葉を発する。
A「でも……」
B「?」
A「でも雪の日はこうして会える」
僕は流れる前の涙を拭い軽く笑って見せる。
B「……ははっ! そうだな!!」
A「また来年も会えたら会いましょう」
B「当たり前だ」
僕は彼女の頭に手を乗せ、ポンポンっと二回優しく叩いた。
A「痛いわ」
A「……でも温かい」
僕は何も言葉にしないまま彼女に対し背を向け、来た道を戻り始める。
十数歩進み後ろを振り返ると、そこに彼女の姿はなかった。
だが、降り積もる雪の上に、誰かが雪を払い除けた跡のある花束が置かれていた。
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