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 雲が切れて、半月が青い光で辺りを照らす。  坂下三郎は河原の藪に座り込んでいた。  夏の終わり。夜露が草を濡らして、体温が空へ逃げて行く。  脇差しを抜き、腹に当ててみた。思い直して、首筋に当ててみた。  死ねない・・・・  決断できぬまま、脇差しを捨てた。  はあ・・・ため息をつき、草の上に体を横たえた。目が覚めたら、冷たくなっている自分を想像した。
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