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私はカノジョの耳元で囁(ささや)いた。橙色の霧が女達の姿へ変わっていく。そこに人は今までいたのだろうか? 霧しかなかったのに?
私はカノジョに腕を引っ張られ壁へと押し付けられた。まるで壁ドンだなと思っていると、カノジョは私の周りに両腕で囲いを作り女達の熱狂から隔離(かくり)してくれた。その空間がとても気持ち良く、私はカノジョの肩に頭を乗せた。
暫(しばら)くすると百合友達が興奮しながらやってきて早口で言った。
「後ろの女の子がふら~って感じてゆっくり倒れていってビックリしましたよ! 大変でした!」
私はただ愛想笑いをしながら、もしかして倒れていたのは自分だったのかもしれないと思った。
同調。共鳴。沢山の女体(にょたい)が触れ、押し、引き、波のように反響する。女達の性的な興奮は頂点に達し、魂を躰(からだ)から無理矢理引きずり出しエクスタシーの渦へと放り投げる。
カノジョの腕で作られた楽園のような空間で微睡(まどろ)みながら、あの橙色の霧が広がる空間はなんだったのだろうかと私は思った。肌から滲(にじ)み出る性的な汗。煌(きら)めく快感が全身に広がり、震える脚。渇く喉。荒れる心音。
永井豪(ながい ごう)の『デビルマン』に描かれていたサバトのようだ。あの場所もディスコと呼ばれる音と光と熱狂の空間ではなかったか。
ふと会場を見渡すと女達の頭がゆらゆらと蠢(うごめ)いていた。人の頭。ここは確かにクラブの会場だ。
私はほっとして、カノジョの柔らかく大きな胸に顔を埋めた。
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