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通勤電車はいつも混んでいる。
車窓を流れる風景を見ながら俺はカノジョが待つ公園へと思いを馳(は)せていた。カノジョと出会ったのはまだ高校生の時だった。一年経(た)って卒業し、俺達は付き合うようになって、カノジョはいつも俺の通勤途中にある公園で待っていてくれた。待ち合わせ時間は朝七時半。そこで俺達は一時間ばかり朝食を食べながらデートをする。俺は白いワイシャツに、ゆったりとしたベージュの柔らかいキュロットパンツと、黒のハイソックスという格好で通勤電車に揺られていた。
昨夜、六畳一間の俺のアパートで二人は抱き合い、快楽を貪った。暑い部屋の中で汗と唾と愛液にまみれながら抱き合った。幸せな夜。
誰かの手が素肌部分である腿(もも)に当たる。同時にシャツの上を、脇からゆっくりと胸の周辺へと手が触れる。
目眩(めくるめ)くカノジョと過ごした昨夜の夢から現実に引き戻される。
(これはもしや痴漢ってやつか?)
俺のなにもないブラジャーすらすぐずれる真っ平な胸や、エロくない筋肉質な脚に触れて、この手の持ち主は何を考えてるのだろう。俺ならカノジョのような豊満で柔らかく包み込むような胸に触るのに、と思った。
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