04.ロトの娘

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04.ロトの娘

 シェークスピアの劇のように、彼は優雅に一礼して椅子を勧めた。  素直に椅子に腰掛けたコウキの前に、看守が無言でカップを差し出す。白磁に青い花が描かれたカップは、アールグレイの香り高い琥珀色の紅茶に満たされていた。 「毒などない」  最初の出会いを髣髴(ほうふつ)とさせるカップを覗き込むコウキへ告げると、ロビンは殺害状況を記した資料を右手に持ち部屋を歩き始めた。  適度な広さがある室内も、歩き回ると狭く感じられる。毛足の長い濃青の絨毯が足音を吸収していく。 「まずは事件を整理しよう。哀れな犠牲者達は『供物』だ、犠牲に必然性が存在する。それは犯人にとっての、絶対的な信念に基づいたものだった…オレはそこに価値を見出さないが『彼女』には必要だ」  紅茶を口元に運んだコウキが、はっと顔を上げた。 「彼女?」 「ああ、犯人は彼女だね。女性だと意外か?」  大量殺人犯ともなれば、男性が犯人であることが多い。理由は簡単で、体力の問題だった。殺人の間が短いほど男性が犯人の確立が高くなる。逆に女性が犯人の場合、室内での殺害が多かった。     
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