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今回のように屋外で、短期間に殺されている事件は『犯人が男性』というプロファイリングが有力なのだ。それをあっさり覆すロビンの言葉は、コウキにとって常識を否定されるのと同じだった。
「だが…っ」
「人の話は最後まで聞くものだよ、稀有なる羊」
窘める響きに、反論の続きを飲み込んだコウキは紅茶に口をつけた。
「黒人白人問わず、黄色人種も混じる供物は、彼女が選んだ『黒髪』と『ひとつの条件』に当てはまる者たちだ。実験用マウスを選ぶのと同じくらいの気軽さで選ばれた獲物。屋外で殺したのは、その方が彼女にとって有利だったから。ビルの谷間や暗い場所へ誘導しようとしても相手に警戒心を抱かせてしまう。月光が降り注ぐ開けた芝の上は、皆が油断しただろう」
ロビンは足を止めてコウキに向き直った。
椅子に腰掛け、足を組んで資料をサイドテーブルに置く。空調の風が数枚捲ろうとするのを、彼は左手で拾い上げた聖書を乗せて押さえた。
「つまり供物は自ら歩いて舞台に立った。なのに抵抗の痕がない。なぜだろうね」
答えをコウキに譲るように口元に笑みを浮かべて小首を傾げる。
「顔見知りか、意識を奪うか」
どちらとも断定せずに呟けば、ゆったり頷いたロビンが右手の平を上に向けて何かを受けるような仕草を見せた。
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