04.ロトの娘

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「検死結果に記載されている結果で判断するなら、顔見知りだ。しかし実際は違う。もう一度検死をするといい。供物の右手のひらに針の痕跡が残っている筈だ」  見落とした共通点の提示に、コウキは「わかった」と了承を返す。  満足そうなロビンが足を組みなおした。 「意識のない獲物を前に、彼女は黒い布を被る。漆黒より赤みかかった色だな、ワインレッドかも知れない……全身を覆う大きさで、保管に困らない形状なら心当たりもある。普段は人目に触れる場所に平然と放置されている筈だ。殺害を儀式と考える彼女にとって、黒と赤は正装だから他の色を纏うことはしない。全身同じような色で統一している」  録音メモを録るコウキの手元にちらりと視線を向け、ロビンは一度言葉を切って紅茶を口に運んだ。 「遺体から盗まれたものはない―――この資料は間違いだらけだな」  くつくつ喉を震わせて嘲うと、ロビンは指先で資料をぱちんと弾いてみせた。 「奪われたのは少量の血、そして命と魂……抽象的な意味ではない。性的な嫌悪感から切り裂き突き刺す彼女が、顔に刃を向けない理由がそこにある。首の後ろ、うなじの髪を切り取った。顔に飛び散った血は、丁寧に布で拭き清めた跡も残っているだろうね」  現場を見ていたように語る連続殺人犯は「羨ましい」と小さく零した。     
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