05.破られたルール

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「稀有なる羊、夜中の訪問に手土産もないのか?」  くすくす笑う男は、しかしコウキの来訪はとっくに想定していた。その証拠にきっちりシャツを羽織り、眠そうな素振りもみせずに笑う。  椅子から立ち上がって迎える様子は見せないが、組んでいた足を解いた姿は話を聞くと明言していた。 「手土産ならある」  現場の写真を数枚広げて見せれば、立ち上がったロビンが手を伸ばす。格子の中へ差し出した写真を受け取り、ロビンは眉を顰めた。  彼の想像と違ったらしい。  不機嫌そうに顔を歪めると大きく溜め息を吐き出した。写真を机の上に放り出し、その上に音を立てて手をつく。  バン、響いた音に看守が驚いたように顔を上げた。  ロビンが感情をあらわにする事は珍しく、こうして激昂した様子を見せたことなどないだろう。思わず息を呑んだコウキに対し、ロビンは取り繕うように笑みを浮かべた。  作り上げた笑顔は完璧だが、それゆえに彼の心情が荒れていることは間違いない。 「……失礼した」  一息ついて謝罪を述べると、彼は椅子に座りなおした。  いつものように足を組み、その上で両手を重ねて指を絡ませる。 「彼女はルールを破ってしまった。残念だが退場して頂くしかないな」     
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