01.罪人の予言

2/4
67人が本棚に入れています
本棚に追加
/44ページ
 丁寧な口調で声をかけてきたのは、殺された上司の地位を継いだ青年だ。穏やかな性格と口調ながら、政治家のように裏の顔を隠しているのだろう。この地位まで上り詰めるには、それなりの実力と根回しが必要だった。 「コウキさん、『あの人』が呼んでいますのでお願いします」  以前の男と違い、自らコウキを呼びにくるあたり真面目なのだ。『あれ』から『あの人』に呼び名が昇格した連続殺人犯を思い浮かべ、コウキは眉を顰めた。 「申し訳ありません」  謝りながらも譲る気はない口調の青年に頷き、渋々立ち上がったコウキは大きく溜め息を吐く。  黒髪を風がさらい、すこしだけコウキの重い気分を掬い上げてくれた。     
/44ページ

最初のコメントを投稿しよう!