02.忠告と恐怖

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 ……ロビンの選択だな。  確証を持って椅子の肘掛けの装飾に触れた。アンティーク調の椅子は芝居がかっていて、あの(じつ)を重んじる上司には似合わない。おそらく値段は高い物だと判断し、コウキはそこで椅子についての考察をやめた。  ロビンが顔を上げたのだ。 「待たせたね、稀有なる羊」  いつもの綺麗な笑みを浮かべる。作った表情を見抜かれるのを承知で浮かべられる口元の笑みは、すでに彼の一部として当たり前になっていた。 「それは?」  手元の資料を視線で指し示せば、彼はあっさりと書類をこちらへ放り投げた。足元に落ちた書類を拾い上げれば、そこには複数の遺体のカルテと写真が並んでいる。 「殺されたのは若い男女、整った顔、美しい黒髪、そして……優秀な頭脳。神が与えたもうた幸を一身に纏う者たちだ。寵愛されたアベルのように、カインに恨まれ妬まれる存在」  一流大学で優秀な成績を収める面々は、一様に黒髪だった。人種により好みや差はあるだろうが、顔立ちも整っているという点で否定されることはない。モデル達の写真だといわれても違和感ないほど、彼らは似たような雰囲気を持っていた。     
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