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02.忠告と恐怖
「最後のターゲットは……『コウキ』だ」
声に出されなかった彼の確証に満ちた言葉が、鎖のようにコウキを縛り付けていた。
あの男と関わったばかりに、逃走の手助けをしたと疑われ、勝手に過去を探られ、殺人現場を見せ付けられて、殺人犯扱いで監禁もされた。これ以上の不幸はそうそうない。
無視したいのに気になってしまうのは、彼がコウキに対して嘘を吐かないからだ。誤魔化したり答えないことはあっても、バレるような嘘は吐かない。
わざわざ呼び出してまで伝えたということは、自衛しろという意味だろう。
ましてや彼はコウキのことを『稀有なる羊』や『最愛の犠牲者』といった抽象的な呼び方をした。わざわざ名前で呼ぶときは要注意なのだ。
寒い廊下を進んだ先で、ロビンは椅子に腰掛けていた。珍しく動かないので、眠っているのかと思えばそうでもない。手元の書類をじっと読み耽っているようだった。
「ロビン」
「ああ、少し待ってくれ」
普段は読みかけの本でも放置して相手をする男の真剣な声色に、小さく頷いて椅子へ落ち着いた。以前の椅子より座り心地のよいクッションは柔らかすぎず硬すぎず、上質な生地でコウキを包み込む。
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