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屋根裏の滞在者
「はじめまして……じゃないですよね?」
僕が声をかけてから、彼女ははっとした表情のまましばらく静止していた。
カメラを持つ手の少し赤くなった指先が震えている。彼女はくしゅん、くしゃみをした。
僕はコートのポケットから、自室の屋根裏で発見したスマートフォンを取り出す。
「わすれもの」
「わ、私のじゃない……です」
この冬景色も相俟って彼女の様子は、まるでこの世の終末が挨拶をしたかのような絶望感を漂わせていた。
被害者は僕の方なのに、これでは僕が彼女に悪いことをしているみたいだ。
「そうか、僕の勘違いならいいんです。警察に届けて……」
「それはだめです!!」
「なんでですか? あんたには関係ないことでしょ」
彼女は口を噤んだ。だめだ。これでは埒が明かない。彼女はくしゅん、とまたくしゃみ。僕はスマートフォンの電源を入れる。
画面が明るくなり、ロック画面が表示される。
本人認証の為に4桁のパスワード入力がなければホーム画面にいけない仕組みになっているそれを、彼女のほうに向ける。
「"0407"」
ホーム画面は、僕の寝顔を真上から撮った写真が背景に設定されていた。
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