優しい嘘 前編

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「何で敬語?同い年でしょ?てか名前似てない?!これから1年間、縁があれば3年間か…宜しくな!」 自分で思っている以上に大きな声が出てしまっていたようだ。不意に隣から吹き出したような笑い声が聞こえ俺はその笑い声の主へと視線を移す。 「え?何で笑ったの?」 隣の席で急に笑い出した彼女は黒髪のショートヘアがよく似合う美人だった。俺の言葉にくしゃっとした笑顔を向けた後で大きな瞳を輝かせこちらを見ると、 「ごめん!声大きいし元気だなーって思ってさ。それに洸平、柊平なんてお笑いのコンビみたいだなって。あ、私は香坂晶(こうさかあきら)縁があれば3年間よろしく!」 「こら、笑いながら言うな!あきらって言うのか…へぇ…なんか良い名前だな!似合ってる!」 「そう?よく男みたいな名前だって言われるんだけど…そんな風に言われたのは初めてだから嬉しい!」 そう言って笑った彼女の顔が恐ろしいくらいに可愛くて、俺はもう一瞬で恋に落ちてしまった。 その日から俺たち3人は事あるごとに一緒に居るようになった。毎日たわいも無い話で大笑いする俺と晶を優しく見守るように見つめる柊平がいて、俺たちはとても良いバランスで成り立っていた。 その年の冬には俺と晶は恋人関係になり、柊平とは親友と呼べる程に親しくなっていた。俺と晶が付き合ってからも俺たちはずっと一緒だった。 「なぁ、いい加減俺邪魔じゃない?たまには二人でデートでもしたら?」 「何言ってんだよー。そんなの別に気遣わなくていいって!」 「そうだよ!今更だよ!ずっと三人で遊んできたじゃん!これからもずっと一緒だよ柊ちゃん!」 無邪気に笑って言葉を返す晶を横目でチラリと見る。そうは言ったもののたまには二人になりたいと思っていたりもして。だけど…なんだろう…それはそれで恥ずかしいというか何というか…俺は一歩踏み込めないでいた。
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