第2章

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喧騒から離れた山科の坂道を登った所、 まばらになった住宅街の先。 こんもりと茂った屋敷森に守られるように構えられた洋館。 風雨に耐え、人の背より高いレンガの塀は、 色も元が明らかにはわからないほど煤け、その側には驚くほど近く疎水が流れる。 外界から視界どころか、流れる空気さへも隔てるような、旧びた窓。 厚いガラス越しに見るのは敷地内の大木に止まる輩だけかもしれない。 その烏が首を傾げて眺めたものは、二人の全裸の男が倒れている姿だっただろう。 岩絵具が体中についた大柄な男はやがて起き上がり、何やら身体中を探ったあとの 暗い部屋の中を見回しついた悪態は、人ではないものには到底理解ができるものではないだろう。 暗がりを慎重に歩く一糸纏わぬ肢体はやがて奥の扉の奥に消えて行った。 シャワーを浴びる水音が微かに漏れてくる。 ーーーーーーーーーーーーー 青木がシャワーから出ると、薄暗かった部屋には僅かに陽が差し込んでいた。 辛うじて用意してあったバスタオルで洗った髪を乾かしながら、窓のそばによると、 その時初めて視界にはいった姿は クリーム色の場違いな塊。 人間だ…… 悟った青木はその目の前の塊、 髪の毛だとわかる部分に添えられた骨ばったそれに手をかける。 起こす動作の先、 息もしていないようなその塊は唐突にも呼吸を始める。 相手は丸裸で床に打ち捨てられている。 床は絨毯とはいえ、その下の下地はさらに強固で、 固いあまりにも硬質な床は足の下に置けばわかる。 どうやら俺はセックスしたらしい 記憶は曖昧だが たしかに感触は性器に残る。 目の前の肉体…… 尻の穴から白い精液が粘ったまま滴り落ち、そして隠微にもその先に白く硬直したその後を残す。 俺は咄嗟に手近にあったシーツでその身体を覆った。
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