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切れてる僕と、途切れる記憶。
今日はなんだか機嫌が悪い。それもこれも、みんな彼女のせいだ。
話は一週間前にさかのぼる。
桜の咲く山の写真を撮りに、今年も一緒にいつもの山を登る約束を彼女としていたのに、今年は行けないかもしれない、そして、僕が写真撮影の山登りに行くのはしばらく先にしてほしい、という手紙が届いたのだった。
ほかにも、写真が入っていたようだけど、見る気はしなかった。彼女が山登りに行くことができないのなら、仕方がない。一人で行くのだから、天気のよい日の朝早くに自宅を出た。この日は季節外れの陽気で、やや汗ばむくらいだが、いつものシャッターポイントまで、歩を進めていた。
だが、そこで意外な人物を目にした。なんと、手紙を出してきたはずの彼女だった。しかも、カメラを手に、何かを撮影しようとしている。写真の撮影中に話しかけるのはマナー違反だが、それを承知で僕はとっさに声をかけた。
「君が、なんでここにいるんだ?」
「あなたこそ、なんで来たの? しばらく先に予定を伸ばしてほしいって手紙を書いていたじゃない。 急いでここから戻ってよ」
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