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「それより沙織ちゃん待ってんだから、呑気にラーメン作ってないで早く行ってあげなよ」
そうだったと姉の言葉に返事をするも、羽澄はお湯を注いだばかりのどんぶりを見た。熱湯を浴びた乾燥麺が、香ばしい匂いと共にぷるんとした柔らかさを取り戻していく。
「えーお姉ちゃん、ラーメンもうすぐ出来上がるんだけど……どうしよう?」
「なにバカなこと言ってんの。こんな暑い中、あんた沙織ちゃんをずっと外で待たせるわけ?」
夏美が眉間に皺を寄せて睨むと、「う……」と言って羽澄はもう一度どんぶりの方を見る。
ごめん、ラーメン。君の願いは叶えられそうにない……。
「じゃあお姉ちゃん、代わりにこれ食べといて!」
半ばやけくそな捨て台詞を吐いて、羽澄は急いで二階の自室へと走った。ドアを開けて慌てて身支度を終えると、勢いそのままで玄関まで走る。ドタドタと階段を降りれば、わずかに香るスープの匂い。ぐうと鳴りそうなお腹を抑えて、玄関横にある姿見の前に立った。
顔の輪郭をなぞるように、少し肩にかかったミディアムヘアに寝癖なし。羽澄はきょろっと大きな両目を動かして、そのまま足元までチェックをする。うん、これならバッチリだ。
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