黒い本の勇者

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「お前がやらないというのなら、私がやろう。────ゼクス!」 「なっ!卑怯だぞ!」  右手を伸ばし魔王が呪文を唱えると、操り人形のようにルドルフの身体が魔王の意志で動くようになった。カクカクと不自然な動きで剣を構える。 「何があろうと私は不滅だ!!」 「やめろ!!」  村人たちにも聞こえるような大きな声で叫んだ魔王は右手を引き寄せる動作をし、剣を構えたルドルフを魔力で引き寄せた。 「……ゴフッ……、────……成長したな……」  身体にルドルフの剣が突き刺さり、魔王は血を吐いた。自由に動くようになった両手で魔王の身体から剣を抜くと魔力が弱まり、二人を囲っていた火が消え、今度は村人たちが彼らを囲った。 「さすが、勇者様!」 「勇者様が居れば、怖いものはないですね!」 「一撃で倒すとは!」  村人たちが口々にルドルフを称える。 「ああ……、俺が倒したんだ」 「……?勇者様、泣いていらっしゃるのですか?ああ、もしかして嬉し泣きですか?」 「……」  ルドルフは黙って魔王を肩に担ぎ、歩き出した。
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