【 三、台詞 】

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 俺は、ある違和感に、すぐに気がついた。  この劇……  セリフは全て声優が喋っていた。  音楽と一緒にその道のプロたちのイイ声が聞こえてくる。  園児は流れてくるセリフに合わせて口パクしながら踊っていた。  登場人物たちのセリフはすでに完成されていたのだ。 「腹から声を出すんだ」と、余計なアドバイスをしてしまったのが恥ずかしい。  早起きし最前列の席を陣取るほど気合の入っていた俺だったが、想像していなかった展開に少し動揺。  正直な話、舞台の上で元気に喋る甥を期待していた。 「セリフ喋らんのかいっ!」  思わず声に出してツッコミ入れそうになった。  ピーターパンの声、どこかで聞いたことがあった。  アムロレイ、ヤムチャ、タキシード仮面……、古谷徹!  さっそうと登場した甥が扮する海賊フック。  見た目はカワイイお子様だが、聞こえてくるのはオジサンのイイ声。  これもどこかで聞いたことがある。  波平、八宝菜、モロウ将軍……、永井一郎!  永井一郎さんの「いけー! すすめー!」に合わせて、かぎ爪を高々と振り上げて踊る甥。 「死ぬのが嫌ならオレ様の嫁さんになるのだぁ!」と、女の子に迫る一郎&甥。  凄いコラボに俺は震えた。  いや、凄いけど、「本当にセリフ一切喋らんのかーーい!」
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