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思い起こせば去年。
朝っぱらから人身事故の影響で友人が足止めを食らってしまい、箱根に向かうロマンスカーの出発時刻に間に合わないという大アクシデント勃発。
八時三十分発なのに八時五十分に現れた友人の第一声は「地獄っす」だった。
「温泉は中止にしてこのまま新宿の街をふらふらしようか」などと、なげやりなことを言いながらも十時四十分発の席を購入し気持ちを切り替え出発した。
どの温泉に浸かるのかは現場に行ってからいつも適当に決める。去年は水着で楽しむ温泉テーマパークという場所に行ってみることにした。
ざっくりとした感想を言うと「ダメな温泉施設があると知ることができたのは財産。つまらなかったという経験が我々を成長させる」だ。
旅というのはスタートでつまずいてしまうと悪い流れが最後まで続いてしまうものなのかもしれない。
そんな去年の経験を踏まえて、今年は七時発の席を予約した。
新年早々の早朝。七時前に人身事故は起きないはずという謎の自信。
スタートは完璧だったのに、まさか帰るときに人身事故が起こるとは……
「この時期は飛び込みたくなるんですかね」と呟く友人の表情は凄く眠たそうだった。
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