魔女の涙は雪と溶ける

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 森の中の家へ戻ろうと、ついぞリュリュは歩き出す。そんな彼女を心配そうに見ながら、コクも羽を広げた。 「待ってくれ!」  雪に染まった静寂の中、突如響いた声。  振り返ったリュリュは、相手の顔を見る間も無く、強く強く引き寄せられ、暖かい腕の中に抱き込まれた。凍えた身体には、それが火傷しそうなほどあったかく感じられた。 「遅くなって、ごめん。……リュリュ、今度こそは最期まで君の側に」  耳元で囁かれたのは、初めて聞く声。しかし、言葉にこもる暖かさは紛れもなく求めていたあの人だった。  顔を上げ、信じられない思いで目を合わせると、くしゃりと目尻に皺を寄せて彼は笑う。そんな彼の瞳からは涙がこぼれ落ちそうだった。  呆然とするリュリュを抱きしめる男性を、黒い嘴がついばむ。 「遅いんだよ。リュリュを待たせやがって」  鳥の彼に表情は無いけれど、まるで泣き笑いのような声だった。 「悪かった。でも、その分、今度こそずっと一緒だ。……流石に人間が何百年も生きるのは難しいらしくて、随分時間がかかったよ」  その言葉で、リュリュは彼が訪れるのが遅かった理由を察した。魔女にとっても伝説のような秘術。それを彼はリュリュのために探し出したのだ。  人間には辛すぎる長い時間を彼は共に生きてくれるのだと、泣き出しそうになった。男はそんなリュリュの唇をさっと奪い、そっと耳元で囁く。 「俺の今度の名前はね……」 END.
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