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どの竜も、まだ人の膝下ほどの大きさしかない。
しかし気になるのは、色だ。シャルロッテのような黒い竜など、全く見当たらない。
「シャルロッテ。お前はなぜ黒いのだ」
「なぜと言われてもな……んー、強いから?」
率直に言って、聞く相手を間違えた。
黒ければ強いと言うなら、アサシンは皆最強になってしまうだろう。
「素晴らしい! では、早速だが実戦訓練に移るとしよう!」
騎士団長は子竜を召喚した皆を引き連れ、訓練場へと向かう。
まだ召喚出来ていない者は、引き続き代理の者が見るようだ。
訓練場で、騎士団長による説明が始まる。
「ベビードラゴンクラスの竜騎士は、地上での白兵戦がメインだ。ナイトクラスのドラゴンになってようやく、空中戦への展開も可能になる」
至って真面目な話の途中だが、シャルロッテの腹の音がきゅるきゅると煩い。
確かに昼時は近いが、我慢出来ないのか。
「知っての通り、竜騎士とは魔力にも優れた者に適性が見出される。要は、戦場でのオールラウンダーと言えよう」
「わらわ、おなかすいたー……」
「そう、オナカスイター……いやすまない、オールラウンダーとして相応しい実戦能力を、君たちには身につけてもらいたい」
紛らわしい事を言うなと、シャルロッテの背中を小突く。
そしていざ実戦訓練という時、俺達の前にまたもや人集りが出来た。
発端はと言えば、竜騎士同士でペアを作るようにと言われたためだ。
「是非、ご教授おねがいします!」
「悪いが……俺も新人なのだが」
どうにも皆、その節を忘れている気がしてならない。
確かに契約した竜は規格外の大きさだが、竜騎士としての基本など教えられる筈もないのだ。
だが俺の心情など全く意に介せず、騎士団長は高らかに笑っている。
「はっはっは! 素晴らしいよ、ジーク君。私より君は遥かに強い、ゆえに適任だと皆が分かっているようだ」
「待ってくれ騎士団長、過ぎた評価を──」
「よろしい! 全員まとめて、ジーク君に白兵戦の基本を教わりたまえ!」
あれか。この国の人間は皆、寄って集って来るのが恒例なのだろうか。
ある意味、もう白兵戦の基本を分かっているではないか。複数をもって個を撃破しようとする辺りな。
いいだろう。ならば、まとめて面倒見てやろう。
シャルロッテを──いや、駄目だ。腹が減りすぎてへたり込んでいる。
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