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少々昼時を過ぎたようだが、復活した騎士団長の号令により、昼食の時間が設けられる。
今回は特別に王国が昼食を用意したらしいが、俺はそれを辞退した。あの騒がしい中で飯など食えん。
何より、騎士団長の頬を見ていられない。
『はっ! 私としたことが、レディに失礼をしてしまったようだね。はっはっは!』
目を覚ますなり、騎士団長は笑っていたが。
原因とも言えるシャルロッテは、先程から不機嫌だ。
拳骨をくれてやったからだと思うが、自業自得としか言えない。むっとした表情のまま、俺の服の裾を掴んで後に続いている。
向かう先は、大通りから離れた場所にある、小料理屋だ。女将一人で経営している所で、俺はアサシン時代から時折世話になっている。
扉を開けるなり、女将の一声が響いた。
「いらっしゃい! なんだ、ジークじゃないか」
「何だとは心外だな。シャルロッテ、好きなものを頼むといい」
席に着き、隣に座ったシャルロッテに注文を促す。
先程パンをやったばかりだが、泣いたせいで腹が減ったらしい。
その証拠に、店に入ってからというものの、表情がぱあと輝いている。
「いいのか!? わらわ、これとこれと、あっ! それも食べてみたい!」
まあ食い切れるなら、何を頼んでも構わないが。
水を運んで来た女将が、シャルロッテを見て驚く。
「あらあら、可愛いお嬢ちゃんだね! ジーク、あんたもやるじゃないか!」
黙っていれば可愛いかも知れんがな。
俺は水を飲むため、鼻から口元を覆う面を外した。
「お嬢ちゃん、こいつ顔はいいんだけどさ。ちょっと、つっけんどんでね」
「うむ、分かるぞ。ちょっと頓珍漢でな」
突っ慳貪と頓珍漢では大分違うぞ、シャルロッテ。
敢えて言うなら、頓珍漢は寧ろお前だ。
料理が運ばれると、もくもくと頬張り始めるシャルロッテ。
女将はその様を微笑みながら見ている。こうなれば好機だ。俺の用事を済ませられる。
「女将。この国の竜騎士団長と副団長は、どれだけ強いのだ」
ついぞ手合わせでは判明しなかった事を、女将に問うてみる。
此処の女将は、何かと情報通でもあるため、それが狙いで来たのだ。
「ああ、あの二人かい? そうさね。あの二人だけでも、一日で小国を攻め落とせるって言われたくらいだね」
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