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アサシンの頂
もう沢山だ。
俺は幼い頃からアサシンを生業としてきた。十にもならない頃からアサシンとなり──十五年が経つ。
教会に適正があるからと言われ、その意見に流されるまま生きてきた。やり甲斐などない。あるのは、人を亡骸へと変えてしまう虚しさだけだ。
その十五年の間に俺は、ギルドでも異例と言われる程、依頼を遂行した。だが、アサシンとは金で人の命を奪うだけの職ではない。
俺達が暗殺対象とするものは、法や権力すら力で捻じ伏せるような、質の悪い悪党だ。
勿論、命を奪っている事に違いはない──偽善と呼ばれればそれまでだが。
「おおい、宵闇の招き手~!」
「その名で俺を呼ぶな」
よく響く、馴染みのある声。遠くから走って来るのは、アサシンギルドの同僚だ。
朗らかな笑みを浮かべながら、段々と近付いて来る。もっとも、俺の嫌がる呼び名を使いながら、ではあるが。
「ジーク。さっきギルマス達と、何時間も何を話していたの?」
小首を傾げ、俺に問うアネッサ。
こうして見ている分には、アサシンと言うよりは年相応の少女だ。
「俺は……アサシンギルドから抜けるつもりだ」
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