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社内恋愛というのは、ダメになってしまうと、それはそれは…生き地獄だ。
朝から徹の顔も見たくない気分なのに絶対に会うはめになってしまうのだから始末が悪い。
しかも2人は同じ広域営業促進部だというのが、また大問題だった。
「おはよう」
意外なことに、まるで何事も無かったように翼に挨拶してきた徹。
「……おはよう」
「後でちょっといいか?」
「えっと…う、ん」
昨夜、マンションを出た翼をうしろから追っても来なかった徹。
あのあと徹とは、ひと言もはなしていない。スマホへきた徹からの連絡はすべて無視していた。
でも、このままってわけにはいかない。
別れ話はきちんとすべきだ。
徹と付き合っていると周りには思われているままのはずだ。
周りを見渡し今後の煩わしい問題を考えて、ため息をついた。
デスクの上にあるファイルから赤いファイルを取り出し、?にかかる髪を耳にかけてからファイルを開き1番上の資料に目を通した。
明日からは、札幌ね。
最近営業成績が下がり気味の北海道札幌支社へ行き、その原因を見つけるために明日から出張する予定になっていた。
「山梨、少ししたら外回りに行くから準備しててくれ」
目黒から声をかけられ、翼は少し緊張してしまう。
いつもなら、なんとも思わなかった営業先への目黒との同行。
今日は仕事以外の何かがありそうな予感がしていた。だから、翼の返事は、ロボットみたいにとてもたどたどしくなっていた。
「あっ、は、はい、わかり…ました」
奇妙な返事をする翼を横目で見ていた徹は、ボールペンのペン先を出したり入れたりを数回繰り返した後、視線をパソコン画面へ戻していた。
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