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「山梨、行くぞ」
「は、はい」
バッグと薄手のコートを手にして目黒の後を追う。
「翼」
呼び止められ、振り返ると徹が座ったままスマホを上げて見せた。
「連絡入れるから」
口パクぎみに徹がそう言って、目だけで微笑んだ。
「…うん、わかった。あとで」
廊下へ出てエレベーターホールへ向かう。
「…千葉になんか言われたのか?」
先にいた目黒の隣に並ぶ。
「あとで話したいから、連絡するってだけです」
「そうか」
頷いたあと目黒は翼を見おろし
「おまえ、大丈夫か?」と聞いた。
「はい、大丈夫です。ご心配ありがとうございます。それから、昨日も…ありがとうございました」
「ああ」
それだけ?なんだか素っ気ない言葉だ。
確かに周りに人がいるので込み入った話は出来ないが、何か翼には目黒の態度を物足りなく感じていた。
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