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営業業務を終えて目黒と帰社した翼は、パソコンに向かう。1日の業務報告書を書いたあと、今日周った得意先にお礼のメールを作っていた。
「お礼メールか?感心感心」
後ろから肩に軽く手を置かれて翼は振り返る。
徹だ。
「…なに?」
翼は、どうしても徹に対して優しいかんじに返事が出来ずにいた。
徹は少しかがみ、パソコン画面を覗くような感じにしながら背後から翼へ近づいてきた。
「帰りにさ、おまえんちへ言ってもいい?話と渡したいものあるから」
小声で周りに聞こえないように言う徹。
「うち?よしてよ。昨日あんなことがあったのよ?無理だから」
翼は、近づいてきた徹の肩を押した。
「じゃ、どっか飯にいこ。このままじゃお互いに気まずいだろ?」
きちんと別れ話はするべきだ。同じ部署だし、同期だ。
「……うん、そうね…行く」
なるべく穏便に後腐れなく別れたい。
既に翼の気持ちは別れる方向に固まっている。
浮気だか本気だかわからないが、半裸の女性を見た時点で翼の徹に対する気持ちは一気に冷めていた。
もう何を言われても徹と結婚する気には、ならない。
あんな冷血なキツネ男とは、きっぱり別れたい。全てを忘れて新しく出直そう。
…ひとつの恋が終わった、それだけだ。
パソコン画面を確認し、メールの送信をする為、翼は静かにキーボードのエンターキーを押した。
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