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だが、これ以上突っ込むととんでもないことになる気がして、翼は黙ることに決めた。
今日は、訳がわからない。少し様子を窺う方がいいんじゃないだろうか。
「何を考えてる?」
「え?」
「お前の考える顔もそれなりにいいが、隣にいて黙っていられるとそれはそれで気になる」
「ひっ! えっと私のことは気にしないで下さい」
「無理だな」
「どっどうしてですか?」
「それは」
言葉を切り、じっと翼を見つめた目黒は急に柔らかい笑顔を見せ、当然みたいな風に
「お前が好きだから」
と言って、大きな瞳を優しく細めてみせた。
言わせるなとか言っておきながら自分から進んで言っている気がする。それよりも……。
「!!」
なんかすごく…なんだろう、もう、急に恥ずかしい!
目黒の言葉が、キューピッドが放つ恋の矢みたいに、まっすぐに飛んできて翼の胸に深く突き刺さってきていた。
キューピッドさん、放つ場所を間違えてないかい?
翼は、目を見開いて目黒を見ていた。
さっきの目黒からの告白は、ただ驚きすぎただけだった。
でも、今回のは、何か違う。
本気かもしれない。
なぜかそう思えて、翼は更に目黒を見返していた。
「あんまり、見るな」
「え?」
「恥ずかしいだろ。お前とこうして2人きりで仕事以外のことを話すのも見るのも初めてなんだからな」
「ああ、そういえばそうですね」
「今頃気がついたのか? だいぶ呑気だな、お前は」
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