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まるで、その中に夜を封じ込めたかのように黒く静かな長い髪。
焔さえ凍てつくような冷ややかな双眸。
髪とは対照的に、人形かと思うほどに真っ白な素肌。
そして、一言一言がしっかりとした形を模して伝わってくるような強い声。
一目見ただけで、こいつは他の奴らとは何かが違う……そう感じた。
そして、その予感は見事に的中した。
?? 彼女は『天才』だった。
沢山の努力を積み重ねてきた秀才たちをあっという間に追い抜き、あらゆる分野のあらゆる賞を総ナメにし、いくつもの大会で記録を塗り替えていった。
そんな天才に出会った俺が最初に思ったことは、感嘆でも驚愕でもなければ、羨望でもなかった。
天才を目の当たりにした俺にあったのは『嫌悪』だった。
血の滲むような努力を積み重ねてきた秀才たちが、嗚咽を堪えるように唇を噛み締めて悔し涙を流し、自分と天才との圧倒的な差に絶望する様子を見て、俺は「天才とは『悪』である」と認識するようになった。
天才は『才能』という、努力では決して手に入れることができない力で勝利を手にする。
天才と凡人が同じ努力をしたところで、最終的には才能の差で勝敗が決まってしまうという理不尽な世界に対し、不快感を覚えた。
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