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しかし正直なところ、俺にとってそれは対した問題ではなかった。
俺は優等生でもなければ、秀才でもない。
努力だって、誰かに自慢できるほどしたことがなかったし、誰かに負けたからといって涙を流したこともなかった。
そんな凡人の中の凡人である俺と、天才である白月 蒼子が関わることなど一生無いと、そう思っていたから。
けれどそんな俺の考えとは裏腹に、どういうわけか彼女は俺に付き纏うようになった。
「ねぇ。一緒に帰りましょう」
「……は?」
「聞こえなかった?一緒に帰ろうって言ったんだけど」
「いや、それは聞こえてる。……なんで俺なの?」
「なんで?あなた馬鹿なの?私があなたと一緒に下校したいからに決まってるじゃない」
「それ、理由になってないんだが」
「いいから早くしなさい。天才である私の貴重な時間を、凡人であるあなたと共有してあげるって言ってるのよ。感謝しなさい」
自分のことを恥ずかしげもなく「天才」と言い、俺のことを微塵も悪く思っていない様子で「凡人」と罵るこいつに腹が立ったのを今でも覚えている。
***
あれから6年経った現在、高校2年生の春を迎えたばかりの俺、皇 晴人は、未だにその天才少女に訳もわからずに付き纏われていた。
「ねぇ??」
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