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これまでよりもさらに遅く、二十分ちょっと遅れて待ち合わせ場所に行った。
車の中のタカくんは、文庫本を熱心に読んでいた。
やられた!……タカくんの姿を見た時、そう思った。
タカくんは、そんなに本を読む方じゃないと言っていた。なのに、この前本屋さんに行った時に文庫本を一冊購入した。
「珍しいね。何を買ったの?」
本屋さんの紙カバーが掛けられた表紙を捲って、タイトルを見せてくれた。
「あっ!映画の原作本だ!」
先日見た映画に、二人で感動した。小説が原作だと話した私に「ふ~ん」と言っただけのタカくんだったが。
文庫本を買い、この待たされている時間にそれを読んでいるとは!
なぜだか、妙に悔しかった。
やはり三回程、二十分強遅れて待ち合わせ場所に行った。文庫本を手にしながら、タカくんはいつも笑顔で迎えてくれた。
なんなのよ~!!??その余裕っ!!どうして何も言わないの?「二十分も遅れてる!」て、どうして怒らないの!?
私はどんどん、こじらせていっていた。
そっちがその気なら、私も負けないから!三十分……三十分、遅れて行くんだから!!
『三十分の遅刻』というのは、かなり抵抗があった。長い針、半周分も待たせるなんて、やり過ぎだよね……と、なんとなく思っていたから。
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