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ひらひらと、桜の花弁が宙を舞う春。
暖かい日差しが、全てを包み込んでくれている。
心地良いのだが……。
「っ……!!くしゅんっ!!」
花粉症のわたしには、かなり堪える……。
「明(アカリ)?早く来なさい。入学式に間に合わないでしょ」
「分かってるぅ……」
ずずっと鼻を啜りながら、母さんの元へ駆けて行った。
元はと言えば、母さんが化粧に時間かけてたから、遅れたくせに……。
虚しく心の中で愚痴る。
申し遅れました。
わたし、楠木 明(クスノキ アカリ)。
中学一年生。
今年、市立大峯中学校に入学します。
中学受験?
頭悪いから無理だって。
わたしと母さんは、特に何も話さないまま歩き続けた。
しばらくして、一年生昇降口前に着いた。
「……あ」
そこには、見覚えのある後ろ姿。
「……あ」
その人が振り向き、言葉を発した。
「千英(チエ)!!」
わたしは母さんを追い抜かし、千英の方へと駆け出した。
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