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「あ、明……お母さんを置いて行かないでよ……」
振り向くと、息を弾ませ、額に汗を滲ませている母さんが……。
ごめん、母さん。
思いっきり忘れてました。
母さんは額の汗を、ハンカチで拭おうとした時……。
「……あら、千英ちゃんじゃない。お母さん元気?今どこに?あら、もしかしてもう体育館行っちゃったのかしら……?」
ちょっと母さん。
質問は一つにしなさい。
千英が困ってるじゃん……。
千英は母さんと面識があるものの、このテンションにはまだ慣れていないみたい。
「あ……母さん、元気です。さっき体育館に行ったはずだから、多分もう着いてるかと……」
「あら、そんな細かいとこまで……ありがとね」
全部あなたが訊いたんでしょうが……。
汗を拭き終わった母さん。
ハンカチを鞄の中に入れて、わたし達を見る。
「それじゃあ、明。千英ちゃんに迷惑かけちゃ駄目よ?」
わたしの台詞だって。
千英のお母さんに迷惑かけないでね、母さん……。
母さんは再び、体育館に向けて走り出した。
せっかく汗を拭いたのに。
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