悪魔の果実 (1)

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 * 世界大戦(グレートウォー)が終結した動乱の世は、先の未来を急ぐように目まぐるしい文明開化を遂げていた。 だが、民間人の生活には大きな変化はなく、街中に敷き詰められた石畳の道路には、今日も貴族や民間の商人を乗せた馬車が忙しなく走る。 そんな街中を走行するワインレッドのガソリン式自動車は、一際熱い注目を浴びていた。 貴族の馬車を一回りコンパクトにしたようなクラシカルなオープンカーで、艶のある赤いボディは傷一つなく光り、車体を縁取るようについているシルバーの装飾はまばゆいばかりに輝いている。 「まいったな……」 車を運転していた若い男は、困ったように嘆息を零しながら路肩へ車を停車させた。少し癖のある栗色の髪を持つ男は、翡翠色(エメラルドグリーン)の瞳で周囲を見渡し、その表情は不安げに揺れている。 まるで使いに出た子どもが迷子になったような、そんな眼差しだった。
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