悪魔の果実 (1)

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 * 「ヒース、ちょっと頼まれごとをしてやくれませんか……?」 ヴィクトリア調建築の名残が色濃く残るウォルコット邸の裏庭。 薔薇が咲き誇る庭園の奥にひっそりと佇んでいる淡色(ペールトーン)のガーデンハウスで、ヒースの祖母・カトレアはゆったりとした笑顔を浮かべながら言った。 だが、その笑顔はどこか疲れ切っているようにも見える。 「頼まれごと……?」 ヒースは突然の出来事に困ったように眉を下げて笑いながら、紅茶を注いでいるカトレアの向かいに腰掛けた。 カトレアから淹れたての紅茶が入ったティーカップを差し出される。 ──いったいなんなんだ。 ヒースは嘆息を(こぼ)しながらふと庭園を見渡すと、随所(ずいしょ)に雑草が生えている様子を目にしてカトレアへ言った。 「どうしました? おじいさまの庭園の手入れなら、女中(メイド)のミス・リリーに頼めば……」 「違うの……違うのよ、ヒース。あなたに買ってきてもらいたいものがあるのよ」 カトレアは困った笑みを浮かべながら、悪戯な少女のように首を傾げた。
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