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「ヒース、ちょっと頼まれごとをしてやくれませんか……?」
ヴィクトリア調建築の名残が色濃く残るウォルコット邸の裏庭。
薔薇が咲き誇る庭園の奥にひっそりと佇んでいる淡色のガーデンハウスで、ヒースの祖母・カトレアはゆったりとした笑顔を浮かべながら言った。
だが、その笑顔はどこか疲れ切っているようにも見える。
「頼まれごと……?」
ヒースは突然の出来事に困ったように眉を下げて笑いながら、紅茶を注いでいるカトレアの向かいに腰掛けた。
カトレアから淹れたての紅茶が入ったティーカップを差し出される。
──いったいなんなんだ。
ヒースは嘆息を零しながらふと庭園を見渡すと、随所に雑草が生えている様子を目にしてカトレアへ言った。
「どうしました? おじいさまの庭園の手入れなら、女中のミス・リリーに頼めば……」
「違うの……違うのよ、ヒース。あなたに買ってきてもらいたいものがあるのよ」
カトレアは困った笑みを浮かべながら、悪戯な少女のように首を傾げた。
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