悪魔の果実 (2)

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悪魔の果実 (2)

ヒースたちの乗るワインレッドの車が街中を駆け抜けて西部の現場に向かう道中、ロザリアは助手席から楽しそうに身を乗り出していた。 採れたての蜂蜜色をした長い髪が風に吹かれて靡き、澄んだ髪色は太陽に照らされてキラキラと輝いている。 ヒースはその様子を運転しながら横目で眺め、窘めるように制した。 「危ないですよ、ロザリア嬢」 「ロズでいいわよ。私、車って初めてなの! とても速いのね、風が気持ちいいわ」 黙っていれば気品ある美しい淑女だが、今の彼女は野山を駆け回る少女のようなはしゃぎっぷりだ。 後部座席にちょこんと座るアルフレッドがロザリアを見て身を乗り出し、自慢げな表情で鼻先をふふんと鳴らしながら言った。 「僕は乗ったことありますよ」 女性相手に張り合うアルフレッドは、どうやらまだどこかに子供っぽさが残っているようだった。 学生時代となんら変わらぬアルフレッドを微笑ましく思うも、アルフレッドが刑事が勤まっている様子がまるで想像つかず、ヒースは呆れかえったように嘆息を溢した。
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